吃音(どもること)の主な症状(中核症状)は、
①繰り返し(連発)
②引き伸ばし(伸発)
③ブロック(難発・阻止)
があります。
流暢に話せないため、随伴症状や言いにくい言葉の置き換えを行ったり(二次症状)します。
吃音症状のために、流暢に発話することが困難な状態や、本人が困っていたり悩んでいたりする場合に「吃音」と判定されます。
吃音の症状が出始める時期として最も多いのは 2-5歳と言われています。特に臨床家による特別な指導・支援を行わなくても、自然に吃音が消失することがあります。幼児期に発症した吃音のある子どもの7~8割は自然治癒すると考えられています。
また、中核症状や二次症状による心理的な問題も、吃音症状といえます。
吃音(どもること)
【中核症状】
①繰り返し(連発)(「わ、わ、わたし」)
②引き伸ばし(伸発)(「わーーーたし」)
③ブロック(難発・阻止)(「・・・わたし」(始めのことばが出にくい))
【二次症状】
・膝を叩く、腕を振るなどの四肢の動き(随伴症状)
・「あのー」「えっと」を使う(挿入)
・言いやすい前置きをつける(助走)
・ことばの順序を入れ替える(置き換え)
・どもらないことばを選ぶ(言い換え)
・どもって、すべてを言わない(中止)
・喋る(どもる)場面から逃げる(回避)
【目に見えない吃音症状(心理的な問題)】
・予期不安
・フラストレーション
・自己否定
・恐れ
・恥ずかしさ
・罪の意識
・不安
・絶望
・孤立
※吃音症状のために、流暢に発話することが困難な状態や、本人が困っていたり悩んでいたりする場合に「吃音」と判定する。
吃音症状
吃音症状
発症率など
【有病率】
総人口の1%
どもった話し方をしている人は100人中1人。
(国や地域差はなし)
【発症率】
総人口の5%
一時期でも、どもったことがある人は100人中5人。
【男女比】
3~5:1で男性に多い。
【発吃】
吃音の言語症状が出始めること。
発吃時期としてもっとも多いのは2~5歳といわれている。
自然治癒
・親族に、吃音のある人がいない
・発吃時期が早い
・女児である
・構音獲得に問題がない
・言語能力や認知能力が高い
・情緒・情動面の問題がない
原因
その他
・吃音と知能は関係がない。
・年齢とともに連発、伸発は少なくなり、ブロック(難発)が増えていく。
・ブロックは100%声門閉鎖(声帯が内転)している。
・吃音の発生には必ずしも喉頭(声帯)は必要ない。
・吃音の発生する部位は、語頭で90%生じる(2番目の語が関係する)。
・吃音の脳機能は、右半球が過活動で、左半球が低活動である。
・右利きに矯正することは、吃音になることと関係がない。
・2歳でも半分以上の子が吃音を自覚しており、5歳で80%自覚している。
・「意識させない」というアドバイスは的確ではない。
・吃音を軽減する条件は、「歌を歌う」「斉読」「ゆっくり話す」「独り言」「ささやき声」などがある。
・吃音の発生することばに一貫性がある(同じ文章を何度読んでも、吃音が生じる場所が変化せず、同じ場所で吃音が発生すること)。
・吃音を持っている人は吃音が起きそうな単語(場所)を予期することができる→予期不安
・不安が強いと恐怖になる。
・不安・恐怖があると、100%の力が発揮されない。
・吃音は適応効果がある(同じ文章を読むと吃音頻度が徐々に軽減すること)。
・吃音は周囲のかかわりによって、変化する。
・現時点では特定されていない。
・体質・環境要因の割合を求めた双子研究において、
体質(遺伝子などの内的要因)70%、環境(外的要因)30%の結果を示している。
・言語・認知・運動発達や情緒・情動面の何らかの問題が、
吃音の出現と進展(悪化)に関与されていると推測されている。
・吃音に対する無理解や誤解・偏見といった私たちが住む社会の側の要因も、吃音の原因の出現や進展に少なからず影響を及ぼ
していると考えられている。
・親の子育て、本人の性格、慌てたり緊張したりして話すことは原因ではない。
※吃音である本人が抱える問題だけでなく、
環境や人間関係、周囲の価値感などが重要なポイントとされる。
【参考文献】
菊池良和(2012)『エビデンスに基づいた吃音支援入門』学苑社
小林宏明・川合紀宗(2013)『特別支援教育における 吃音・流暢性障害のある子どもの理解と支援』学苑社